の視点:人間の権利としての身分証明の役割とは?
記:この記事の初出は2021年9月13日で、2022年9月13日に内容を更新したものです。
法的な身分証明は、私たちの多くにとってはごく当たり前の存在です。仕事に就く際の入社手続、銀行口座開設、税額控除や行政による優遇支援プログラムの申請から、レンタカーを借りる際や航空券の購入など、多くの場面で本人確認に用いられる法的な身分証明は、それぞれの個人を法的に保護し、また行政や地域社会における権利の行使において不可欠な仕組みです。
行政側においては、個人の生涯にわたり法的な身分証明を管理することは、社会基盤を整備し、社会正義や市民的権利の強化や経済成長を支える適切な仕組みを構築する上で非常に重要な意味を持っています。このことはすなわち、法的な身分証明を持たない人は、社会参加の機会が制限または損なわれることを意味します。世界中で法的な身分証明を持たない人は10億を超えると推定されています。法的な身分証明の仕組みの不備は、人の権利を制限する世界的な問題なのです。
法的な身分証明とは?
法的な身分証明の定義は、その国の国民が享受すべき福祉、責任や権利へのアクセスを可能にする個人の存在を登録した文書ですが、具体的には、氏名、生年月日、生体または番号データなどからなる個人を特定できる情報です。公的機関が交付するパスポート(旅券)は身分証明書の一例です。
人の一生における最初の法的な身分証明は、出生届などの出生登録です。多くの国では住民登録制度が整備されていますが、公的登録制度の不備によって世界では5歳未満の子どものうち、4人に1人は法的に存在しないことになっている現状があります。
法的な身分証明は人間の権利
世界人権宣言など、多くの宣言や条約に依拠し、国際法では法的な身分証明は人間の権利であることが規定されています。生まれた日から法的な本人確認情報を持つことは、その日から人間の権利と公共サービスへのアクセスが保障されることを意味します。法的な身分証明はまた、国連が2030年までの達成目標として示した17のSDGs(持続可能な開発目標)にも掲げられています。「SDGs目標16-9:2030年までに、出生登録をふくめ、すべての人が、法的な身分証明を持てるようにする」
国連は、出生登録の状況は世界的には改善傾向にあるものの、国によって成果が異なることから、住民登録システムの品質強化に向けた取り組みが必要だと指摘しています。公共サービスのデジタル化に伴い、法的に有効なIDや身分証明の需要は増加しています。国連の法的身分証明アジェンダタスクフォースは、民間デジタルID事業者との円卓会議を開催し、特に法的な枠組みの観点から、行政側のID管理の変化とその影響を示しました。
出生登録や住民登録制度の改善に向けた取り組みが進むなか、ID4Africa などの団体は国際IDデーを制定し、法的な身分証明に対する国際的な認識の向上を目指して活動しています。
国際IDデーとは?
国際IDデーは、世界的な人道に関する記念日(毎年12月10日世界人権デーや6月20日世界難民の日)に倣い、身分証明への関心を高め、活動に対する理解と支援を深めるために制定されました。
今から4年前の2018年に、アフリカ地域の非政府組織(NGO)であるID4Africaは、9月16日を国際IDデーとする国際的なキャンペーンを始動しました。9月16日を選んだ理由は、ズバリSDGsです。「SDGs目標16-9:2030年までに、出生登録をふくめ、すべての人が、法的な身分証明を持てるようにする」、この目標の番号16-9を日付に当てはめました。覚えやすいですね。
キャンペーン開始以降、100を超える政府、人道支援団体、活動組織、標準化団体、NGOが国際IDデーへの賛同を表明しました。HID Globalも活動に賛同し、支援しています。
HID Globalが国際IDデーを支援する理由
HID Globalはより安全にやり取りや取引ができ、生産性や学習環境を向上し、自由に旅行できる世界の実現を目指しています。すべての人が法的な身分証明を使える世界は、まさにHIDが目指すものでもあります。この記事が、国際IDデーと法的な身分証明に対する認識の向上に少しでも貢献でき、そして住民登録制度の向上によってより多くの人が公共サービスにアクセスできるようになることを願っています。
国際IDデーについて詳しくは、キャンペーン公式サイトid-day.orgをご覧ください。HID Global のシチズンアイディーソリューション(CID)部門では、出生登録向けの 住民登録ソリューションなど、HIDのビジョン